~行政対応は改善されない!~
今年3月、埼玉県本庄市で発覚した柿本歩夢くん(5歳)虐待遺棄事件はあまりにも残虐な事件。
今年1月、実の母親を含む同居人3人で床下に穴を掘り歩夢君を埋めたという。
2018年に東京目黒区で起きた結愛ちゃん事件を始め、同種の児童虐待死事件は後を絶たない。
その度に、警察や児童相談所などの行政対応が問題視されるのだが、一向に改善される兆しはない。
今後も同様の事件は続くだろうし、今この時も事件の真っただ中にいる子供たちがいるはずであろうことを考えるいたたまれない。
~助けを求めていた!~
殺されたのは歩夢くんだけではない。事件に新たな展開があったのだが、またも警察の対応に批判が集まっている。
今年3月、埼玉県本庄市で住宅の床下から柿本歩夢くん(当時5)の遺体が見つかった事件。埼玉県警は6月6日、同家の床下から新たに白骨化した高齢女性の遺体が見つかったことを発表した。遺体は同居していた高齢の女性と特定され、事件性を捜査する。
この事件では今年1月、歩夢くんを虐待して死亡させ、遺体を住宅の床下に埋めたとして、母親の派遣社員・柿本知香(30)と、同居する無職・丹羽洋樹(34)、無職・石井陽子(54)の3被告が傷害致死と死体遺棄の罪で起訴されている。3人はさらに、歩夢くんを猫用ケージに約2時間半閉じ込めたなどとする監禁と暴行の疑いで5月11日、埼玉県警に再逮捕された。
遺体は、主犯格と見られる石井陽子の義理の母親だという。
石井の周辺にはこれ以外にも疑わしい死を遂げた者がいるという。
石井の実父は5~6年前に自殺。石井の最初の夫も自殺。2番目の夫も病死。そして今回床下から発見された義母は2番目の夫の母親だったそうだ。
現場となった住居には以前、内縁関係にある丹羽と石井のほかに、石井の義母にあたる大澤優子さん(仮名)が同居していた。この優子さんはある日の朝、パジャマ姿に裸足で「殺される!」と叫び、近所の商店に駆け込んでいる。対応した商店の女性が語る。
「お婆ちゃんは、丹羽や石井らに『押し入れに閉じ込められる』と怯えていました。外を見ると、あの家の塀越しに2人がキョロキョロとお婆ちゃんを探している姿が見えた。引き渡さずに警察を呼びましたが、2人は『認知症だから』と説明したようでした」
もし、警察官が優子さんの話を信じ、保護して捜査が始まっていたなら…と考える。
この件がいつのことかはわからないが、歩夢くんが殺される以前のことであれば…。
この時、警察が的確な対応をとっていれば、もちろん優子さんが殺されることは無かっただろうし、歩夢くんも生きていた可能性があると思うと、この時の埼玉県警の対応、判断はこの事件を未然に防ぐことができたターニングポイントだったように思う。
~埼玉県警の大失態?!~
警察を呼んだ商店の女性は、優子さんが”あの家”の住人であったことを知りながら敢えて丹羽や白石に引き渡さなかったのだ。
それを考えるとこの女性は”あの家”の異様さに気づいていて優子さんの「殺される」という言葉を信じ、警察に助けを求めたのだと思う。
それでも警察は、石井らの”認知症”という言葉を信じて認知症老婆の家族である”殺人犯”に引き渡したのである。
今の時代、長寿長寿で認知症老人が増え、警察官も認知症老人の対応に追われ大変さはよくわかる。
警察官が、認知症の老人を発見して保護すれば家族に引き渡すのは当然のことだろうとも思う。
ただ、商店の女性も優子さんのことを心配して警察に通報しているのだからその点について通報時点で警察には説明があったはずだ。
その点を現場の警察官が把握していれば、「殺される」と言って助けを求めている老女を簡単に石井達に引き渡さなかったのではないか。
通報者の女性がなぜ警察に通報したのかという理由が現場の警察官に届いていれば、優子さんから詳細な聴取をせずに家族である殺人犯に引き渡すことなどなかったはずだ。
通報者の意図が現場の警察官に伝わらず、石井達の言うことだけを信じて認知症と判断してしまったのであれば大失態というしかない。
程度の低い認知症なら警察官が認知症と判断するのは困難なのかもしれない。
”家族に殺される”と訴えるような認知症の症状ならかなり進行した認知症患者であると言えるだろう。
それならば、現場の警察官も優子さんに簡単な質問を行って、自分の名前や住所、家族の名前が言えないとか自宅への帰り道が分からないなどという認知症の症状があるのかどうかの判断をするべきでなかっただろうか。
もし、優子さんを認知症であると判断したならば殺人犯に引き渡した警察官を非難できないかもしれないが、それをしていないのであれば警察官は非難されるべきであろう。