~なぜ出国させた?!~
香港の民主活動家だった周庭(アグネス・チョウ、27歳)は、2020年11月、若者たちの集会を扇動した罪で逮捕され翌年6月まで服役していた。
雄弁だった周庭は、出所後カメラの前でも口を開かなくなったため、どんな過酷な拷問を受けたのかと世界中が心配した。
出所後も再び捕らえられるのではないかとおびえる日々が続き、パニック障害、PTSD、うつ病と診断されたそうだ。
そして、昨年12月3日の誕生日にSNSで「おそらく一生(香港には)戻らない」と宣言し、テレビのインタビューにも応じた。
事実上の亡命宣言である。
保釈中の周庭は、3カ月に1度警察に出頭しなければならないとされていたが、昨年12月28日の出頭期日に出頭しなかった。
香港警察は周庭の捕捉に全力をあげるとし、懸賞金をかけて指名手配すると息巻いている。
彼女は逃げ切れるのか?
私のパスポートがずっと没収されて、何かを変えようという気持ちがあって、カナダの大学で勉強したいという申請を国安警察に提出しました。
でも最初からパスポートを返してもらえたわけではなく、いろんな条件を満たさないとパスポートを返さないということになってしまいました。
ざんげ書を書かされたり、警察への感謝の手紙を書かされたり、中国大陸に連れて行かれたりしました。
一番怖かったのは、中国大陸に行ったことだと思います。中国に行ったら香港に帰れるかもわからなくて、中国で逮捕されたら、何かが起きたら、誰も救いに来ないし、それがほんとにほんとにすごく怖かったです。
それでも香港警察、つまり中国共産党は、周庭にパスポートを渡し出国を許可した。
3カ月に1度、警察に出頭しなければならないにも関わらずだ。
カナダに行けば物理的にも経済的にも出頭が困難になることは明らかなのに。
中国が周庭を泳がしたとしか思えない。
カナダで誰と接触するのか、中国の反逆者をあぶりだすために周庭を監視し続けたに違いない。
中国は世界各地に秘密警察をおいて海外で生活する中国人を監視している。
反政府活動などをする中国人を捕らえて、家族の映像を見せ、家族の身に危害が及ぶことをほのめかし中国に戻るよう説得するという。
周庭氏が亡命宣言をした後、香港警察は、周庭の家族から事情聴取を行ったという。
~亡命先を誤った!!~
カナダには中国人がウジョウジョいる。
香港は建前上、一国二制度とはなっているが、中国本土の法律を適用できることとなっている。
中国には国家情報法という、”中国国民は中国共産党の情報活動に協力する義務を負う”という法律があり、これに背くと罰せられる。
カナダに居住する中国人が周庭の居場所を知っているなら中国共産党に知らせなければならない。
そして、カナダにも中国の秘密警察が暗躍している。
カナダ国営放送(CBC)の調査報道番組『フィフス・エステート』は(昨年)10月20日の放送で、カナダ政府が対中貿易などで便宜を受ける見返りとして、中国当局による国外逃亡者の身柄確保を長年、ひそかにサポートしてきたと告発。人権団体などから批判が噴出している。
カナダ国境サービス庁によれば、2008~22年に他国での「犯罪または重大な犯罪行為」を理由にカナダから強制退去させられた中国人は33人。
周庭の亡命宣言を受けて、カナダ政府は沈黙を保っており、亡命を受け入れることを表明していない。
周庭は、逃亡先を誤ったのかもしれない。
周庭の亡命が成功し自由を勝ち取ることを応援したいが、中国に捕まるのは時間の問題だろう。